お話おじさん′終活記

はや人生はラストステージ、いつのまにか年が過ぎ、いまがいちばん自由で、楽しい。

自分史31

5年前88歳で逝ったH兄が精神障害を発症して入院した時、私は高校に通学していた。もう65,6年前のことである。
川崎市の栗田病院といって、いまは市街化したが、当時は周辺は畑だった。というのは、入院には付き添わなかったが、後になって、用事をたすよういわれて、訪れたことがあった。
用事をたすだけで、兄に会うつもりはなかったが、病院側が気を利かせたのか、病室に案内された。

はじめて経験する精神病棟である。看護婦が分厚い木の扉を開けると、中は大部屋だった。そして、目に飛び込んできたのが、廊下で戸板の上に、着た切りのまま寝かされた男の姿だった。
男は目を虚ろに開いたまま、仰向けになっていた。看護婦が開いた目に手をかざして振って、名前を呼んだ。男は、まったく表情を変えず、そのまま・・・もうダメね、看護婦がつぶやいた。

男は素行が悪かったらしく、放蕩のかぎりをつくして、入院させられたという話。精神病院の廊下で、最後は戸板の上で逝った人の死に、私はたまたま出くわしたのであった。
だれしも、忘れられない、強烈な過去のシーンがあると思うが、その一つ。

2階のテレビにはないので、今日はDVDプレイヤーを買ってきて、取り付けた・・・市の新図書館はDVDの貸し出しもしてくれる。