職員が休暇をとったので、今日は一日代わりに事務所の留守番に出た。
行く桜を惜しむように、前の桜並木道を車がひっきりなしに往来する。風があるのか、事務所の窓から散る花びらを眺めながら、会報来月号の編集をした。
非情にも、この3月開花間際の老木を抜き去った跡を、いま県の委託をうけた業者が、若木を植え始めている。
老木の無残な姿を目の当たりにしたH夫人が、その想いを「桜におもう」と題して寄稿してくれた。
その文中に引用された、茨木のり子さんの詩「さくら」がいいので、紹介させていただく・・・
ことしも生きてさくらを見ています
ひとは生涯に何回ぐらいさくらを見るのかしら
ものごころつくのが十歳ぐらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なり合い霞だったせいでしょう
あでやかとも 妖しとも 不気味とも
捉えかねる花の色
さくらふぶきの下をふららと歩けば
一瞬
名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態
生はいとしき蜃気楼と