お話おじさん′終活記

はや人生はラストステージ、いつのまにか年が過ぎ、いまがいちばん自由で、楽しい。

新藤兼人著「ひとり歩きの朝」を読む

シナリオライターでもある新藤兼人映画監督の随筆集「ひとり歩きの朝」を読んだ。
ことし99歳で、もう外出は車いすだそうだが、監督が妻乙羽信子に先立たれて、赤坂のマンションで一人暮らしをしていた、88歳から90歳にかけての1年半に書かれた生活記である。

生活のこと、育ちのこと、肉親のこと、友人知人のこと、食い物の話、映画とシナリオの話・・・過去現在にわたる、種々雑多な記録である。

どの話にも読み応えがあった。なかでも「お母さん」には共感した。

人それぞれであろうが、とくに知りたかったのが、老を迎えての心境。

監督は、いまも妄執の中に生きている、そして言う。
「だだ一つ提案がある。老人に仕事を与えてもらいたい。人間は仕事をして生きてきたのだから、息絶えるまで仕事をしていたいのだ。仕事のことを考えていたいのだ。」(17頁)

昨年も車いすに乗りながら、新作を撮ったそうである。思いを地で行っている。さらに作りたいらしい。

この仕事にかける執念はものすごい。ヴァイタリティにも敬服する。普通の人ではない。

爪の垢でも飲ませてもらいたいよ・・・