昨日はピカソと並んで、シャガールの話が続いた。
シャガールはロシア生まれのユダヤ人で、ユダヤ人であるために、ピカソとは比較にならない苦難に会った。その苦難とユダヤ教の制約を乗り越えて、より普遍的な愛の世界を創造したという。
新約聖書を認めず、旧約のみを認めるユダヤ教にとっては、キリストは敵対者であり、偶像崇拝禁止の立場から絵画の図像も根本的には認められないという。シャガールは偏狭なユダヤ人になることなく、ユダヤ人弾圧を自らも受けながら、憎悪がさらに憎悪を呼ぶような弾圧の告発を超えて、高い次元の愛の精神に生きた。
空中を浮遊する恋人たちは、単なる幻想的なロマンチックな存在ではなく、20世紀的な悪を通り抜けた上での、他者を愛する愛だという。ゆえにか、糾弾したゲルニカのピカソとは、決別している。
絵画表現の深さに、改めて気づかされた。