お里の仏間の引き戸が開けにくい。甥が敷居に蝋を塗っても塗っても、すべりが悪い・・・
彼が言った「くさった戸」。
この戸は、亡義父が入れた戸。義父は家をいじるのを好んだ。酒もタバコも嗜まない、温泉にも行かない、謹直な人だったので、それでだろう・・・
商売をしていて、金に余裕ができると、しょっちゅう家の中をいじっていたと、娘の家内が言う。
好みの大工や建具屋がいて、床の間をはじめ、柱や戸障子に凝ったようだ。
仏間の引き戸もほんま物、真鍮の金具、上下の板は一枚板、明り取りにはギヤマン風のガラスをはめ込み、さんの細工も凝っている。材料の木は、私には分からないが、漆塗りである。
戸自体がしっかり作ってあって、重い。
甥に建具の見方を教えて言った。
「これが本物の戸」